空色通信 2006年8月号
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「あのときの王子くん」23 大久保ゆう訳

2006年09月09日

 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「あのときの王子くん」22 大久保ゆう訳

22

「こんにちは。」と王子くんがいうと、

「こんにちは。」とポイントがかりがいった。

「ここでなにしてるの?」と王子くんがいうと、

「おきゃくを一〇〇〇にんずつわけてるんだ。」とポイントがかりがいった。「きかんしゃにおきゃくがのってて、そいつをおまえは右だ、おまえは左だって、やってくんだよ。」

 すると、きかんしゃが、ぴかっ、びゅん、かみなりみたいに、ごろごろごろ。ポイントがかりのいるたてものがゆれた。

「ずいぶんいそいでるね。」と王子くんはいった。「なにかさがしてるの?」

「それは、うごかしてるやつだって、わからんよ。」とポイントがかりはいった。

 すると、こんどはぎゃくむきに、ぴかっ、びゅん、ごろごろごろ。

「もうもどってきたの?」と王子くんがきくと……

「おんなじのじゃないよ。」とポイントがかりがいった。「いれかえだ。」

「じぶんのいるところが気にいらないの?」

「ひとは、じぶんのいるところが、ぜったい気にいらないんだ。」とポイントがかりがいった。

 すると、またまた、ぴかっ、びゅん、ごろごろごろ。

「さっきのおきゃくをおいかけてるの?」と王子くんはきいた。

「だれもおっかけてなんかないよ。」とポイントがかりはいった。「なかでねてるか、あくびをしてる。子どもたちだけが、まどガラスに鼻をおしつけてる。」

「子どもだけが、じぶんのさがしものがわかってるんだね。」と王子くんはいった。「パッチワークのにんぎょうにじかんをなくして、それがだいじなものになって、だからそれをとりあげたら、泣いちゃうんだ……」

「うらやましいよ。」とポイントがかりはいった。

★この文章を書いた人→大久保ゆう★こんな時間に→2006年09月09日 07:54 ★トラックバック
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