そおらぁ共和国
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「あのときの王子くん」12 大久保ゆう訳

2006年07月28日

 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「あのときの王子くん」11 大久保ゆう訳

11

 ふたつめの星は、みえっぱりのすまいだった。

「ふふん! ファンのおでましか!」王子くんが見えるなり、みえっぱりはとおくから大ごえをあげた。

 というのも、みえっぱりにかかれば、だれもかれもみんなファンなんだ。

「こんにちは。」と王子くんはいった。「へんなぼうしだね。」

「あいさつできる。」と、みえっぱりはいう。「はくしゅされたら、これであいさつする。あいにく、ここをとおりすぎるひとなんていないわけだが。」

「うん?」王子くんは、なんのことかわからなかった。

「りょう手で、ぱちぱちとやってみな。」と、みえっぱりがおしえるみたいにいった。

 王子くんは、りょう手でぱちぱちとやった。みえっぱりは、ぼうしをちょっともち上げて、そっとあいさつをした。

「王さまのところよりもたのしいな。」と王子くんは心のなかでおもった。だからもういちど、りょう手でぽちぱちとやった。みえっぱりも、ぼうしをちょっともち上げて、もういちどあいさつをした。

 五分つづけてみたけど、おなじことばかりなので、王子くんはこのあそびにもあきてしまった。

「じゃあ、そのぼうしを下ろすには、どうしたらいいの?」と、その子はきいた。

 でも、みえっぱりはきいてなかった。みえっぱりは、ほめことばにしか、ぜったい耳をかさない。

「おまえは、おれさまを心のそこから、たたえているか?」と、その男は王子くんにきいた。

「たたえるって、どういうこと?」

「たたえるっていうのは、このおれさまが、この星でいちばんかっこよくて、いちばんおしゃれで、いちばん金もちで、いちばんかしこいんだって、みとめることだ。」

「でも、星にはきみしかいないよ!」

「おねがいだ、とにかくおれさまをたたえてくれ!」

「たたえるよ。」といって、王子くんは、かたをちょっとあげた。「でも、きみ、そんなことのどこがおもしろいの?」

 そして王子くんは、そこをあとにした。

 おとなのひとって、やっぱりそうとうおかしいよ、とだけ、その子は心のなかで思いつつ、たびはつづく。

★この文章を書いた人→大久保ゆう★こんな時間に→2006年07月28日 23:04 ★トラックバック
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