アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「あのときの王子くん」5 大久保ゆう訳
もう一つの著作権の話 〜保護期間70年延長に向きあって〜

2006年06月22日

 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「あのときの王子くん」6 大久保ゆう訳

 ねえ、王子くん。こんなふうに、ちょっとずつわかってきたんだ。きみがさみしく、ささやかに生きてきたって。ずっときみには、おだやかな夕ぐれしか、いやされるものがなかった。このことをはじめて知ったのは、四日めのあさ、そのとき、きみはぼくにいった。

「夕ぐれが大すきなんだ。夕ぐれを見にいこう……」

「でも、またなきゃ……」

「なにをまつの?」

「夕ぐれをまつんだよ。」

 とてもびっくりしてから、きみはじぶんをわらったのかな。こういったよね。

「てっきりまだ、ぼくんちだとおもってた!」

 なるほど。ごぞんじのとおり、アメリカでまひるのときは、フランスでは夕ぐれ。だからあっというまにフランスへいけたら、夕ぐれが見られるってことになる。でもあいにく、フランスはめちゃくちゃとおい。だけど、きみの星では、てくてくとイスをもってあるけば、それでいい。そうやってきみは、いつでも見たいときに、くれゆくお日さまを見ていたんだ。

「一日に、四四回も夕ぐれを見たことがあるよ!」

 といった少しあとに、きみはこうつけくわえた。

「そうなんだ……ひとはすっごくせつなくなると、夕ぐれがこいしくなるんだ……」

「その四四回ながめた日は、じゃあすっごくせつなかったの?」

 だけどこの王子くんは、へんじをなさらなかった。

★この文章を書いた人→大久保ゆう★こんな時間に→2006年06月22日 13:22 ★トラックバック
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