メイジャ・ヘンリ・リヴィングストン・Jr「サンタクロースがやってきた」(大久保ゆう訳)
フランシス・ファーセラス・チャーチ「サンタクロースはいるんだ」(大久保ゆう訳)

2004年12月24日

 「赤鼻のトナカイ」(大久保ゆう編)

Original poem "Rudolph the Red-nosed Reindeer" by Robert Lewis May (-1976)
(都市伝説的に流布している、詩の原型(語り)から再構成しました。)

 むかしむかし、ルドルフというなまえのトナカイがいました。ルドルフは世界でたったいっぴき、赤い大きな鼻をもつトナカイでした。ですから、みんなから「赤鼻のルドルフ」とよばれていました。

 ルドルフはじぶんの鼻が大きらいでした。みんながじぶんの鼻を見て、大わらいするからです。

「やーい、赤い鼻、赤い鼻。ルドルフの鼻は、まっかっか!」

 こう言われるたび、ルドルフはいつも泣いていました。

「ぼくはみんなとちがう。どうして赤い鼻なんだろう。どうしてみんなとちがうんだろう。こんな鼻、なければいいのに。」

 こんなルドルフを、かぞくはみんなかわいそうに思いました。けれども、どうすることもできなかったのです。ルドルフのもって生まれた赤い鼻は、ずっと赤い鼻のままなのですから。

 ある年のクリスマスイヴのことでした。サンタクロースはでかけるじゅんびをしていました。あのダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリクセムのはっぴきのトナカイをつれて、せかいじゅうをまわるたびのじゅんびをしていました。はっぴきのトナカイをそりにつないで、そりのなかにおもちゃをたくさんつみこんで、もういつでもしゅっぱつできるようになりました。ほかのトナカイたちもみんな、サンタクロースとトナカイたちを見おくろうとあつまっていました。だって、サンタクロースのトナカイは、トナカイみんなのヒーローなのですから。どんなトナカイも、いちどはサンタクロースのトナカイになりたい、と思うくらいです。

 しかし、たいへんなことになってしまいました。夜になるにつれて、とつぜん、きりがあたりいちめんに立ちこめてきたのです。やがて、きりはちきゅうぜんたいをつつみこんでしまいました。

「しまった、これではえんとつがどこにあるかわからんぞ! みんなにプレゼントをわたすことができない!」

 サンタクロースがさけぶと、みんなそわそわしだして、どうすればいいかわからなくなってしまいました。

 そうしてみんながこまっていたとき、ルドルフはひとり森の中にいました。みんなの前に行きたくなかったからです。サンタクロースの見おくりに行くと、赤い鼻を見られて、みんなにわらわれてしまう、と思ったのです。かぞくもみんな行ってしまいました。そんなとき、見おくりに行ったはずのいもうとがかえってきて、ルドルフに言いました。

「お兄ちゃん、サンタさんのお見おくりに行こうよ。もうしゅっぱつしちゃうよ。」

 ルドルフはさいしょはいやがりましたが、いもうとがなんどもしつこく言うので、ついにはあきらめて、サンタクロースの見おくりに行くことになりました。

 ルドルフはびくびくしながら、みんなのあつまるところへ行きました。すると、やっぱりみんなはざわざわとさわぎはじめました。来るんじゃなかった、とルドルフは泣きそうになりました。

 そのとき、サンタクロースもみんながさわいでいるのに気がつきました。

「どうして、みんなさわいでいるんだい?」

 と近くのトナカイにたずねました。

「ルドルフ、赤鼻のルドルフが来たんです。」

 とトナカイはこたえて、ルドルフのいるほうに鼻をむけました。サンタクロースはルドルフを見るなり、たいへんびっくりしました。ルドルフの鼻が赤かったからです。どんなものよりも明るくて、ぴかぴか光る赤い鼻だったからです。

「これでだいじょうぶだ、ルドルフの鼻があれば、こんなにふかいきりの中でも、えんとつのあるばしょがわかるぞ!」

 とサンタクロースは思いました。サンタクロースはいそいでルドルフのいるところへ行きました。ルドルフはびっくりしました。なにせ、目のまえにサンタクロースが来たのですから。

「ルドルフくん、わしたちといっしょに、世界をまわってくれないかな。」

 とサンタクロースは言いました。

「でも。」

 ルドルフはどうしていいかわかりませんでした。じぶんにまったくじしんがなかったのです。みんなとちがうじぶんに、いったい何ができるのか、と思うと、へんじができませんでした。

「でも、ぼくは赤い鼻のトナカイで、みんなとちがいます。」

 ルドルフの目は、なみだでいっぱいでした。

「ぼくは赤鼻のトナカイなんです!」

 ルドルフは言いました。けれども、サンタクロースは言いました。

「そうだ、きみは赤鼻のトナカイだ。みんなとはちがう。でも、だからすごいんだ。きみのぴかぴかの赤鼻は、みんなとちがうけれど、くらい夜道をてらすことができる。だから、やくに立つんだよ。」

「ぼくが、やくに立つ?」

 とルドルフがききました。

「そうだ、やくに立つんだ。さぁ、こっちに来てくれ。」

 サンタクロースはルドルフをつれて、そりのところまで行きました。ルドルフをはっぴきのトナカイのまえ、いちばんまえのところにつなぎました。

 サンタクロースはそりにのりこみ、さけびました。

「おい、ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン! そら、コメット、キューピッド、ダンダー、ブリクセム――そして、ルドルフ! やまをこえて、うみをこえて、ゆくぞ、ゆくぞ、そらゆくぞ!」

 サンタクロースときゅうひきのトナカイはとびたちました。

「がんばるぞ、ぼくはがんばるぞ!」

 とルドルフは思いました。はりきって、赤い鼻でまえをめいっぱい明るくしました。まえが見えるように、えんとつが見えるように。きりだけではなく、雨がふっている町もありました。雪がふっている町もありました。みぞれがふっている町もありました。けれども、ルドルフの鼻のおかげで、どんなえんとつも、どこにあるかはっきりわかりました。ルドルフのおかげで、その年のクリスマスイブ、みんなにプレゼントをとどけることができたのです。

 ルドルフは、この夜から、いちばんゆうめいなトナカイになりました。それだけでなく、みんなのいちばん大好きなトナカイになりました。さいしょは、はずかしかった大きな赤い鼻だけど、いまではみんなのあこがれです。その年のクリスマスイヴからいままで、ずっとルドルフはきゅうひきのいちばんまえにいます。そしてたのしく、げんきに、まえを明るくてらしているのです。


※ 今では、ルドルフの赤い鼻から出る熱を探知して、毎年クリスマスイヴの日に、サンタクロースが今どの国にいるのか、レーダーで追っているそうです。
http://www.noradsanta.org/

First Publishing : 2002

★この文章を書いた人→大久保ゆう★こんな時間に→2004年12月24日 00:06 ★トラックバック
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